花神の庭~病葉(わくらば)転
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薄暮の空を枯葉が踊る。
戒めの蔓蛇が枯れ、ぷつぷつ切れる。踊っているのは、ぐずぐずに腐食した昼顔の葉と、揉みくちゃにされた草摺り衣の破片。
『ねのくにそこのくにに、いぶきはなちてむ』
気吹戸主(いぶきどぬし)は、僕が百合に反魂を施す際、触媒に用いた神だ。
『……此持出往。此加々呑。此気吹放。此佐須良比失』
花神(はなかみ)の彼を砕いたのは、百合の姿で唱えられた祝詞(のりと)だ。
樹花草木にも寿命があり、人と同じく神も死ぬ事がある。
彼は僕の禁忌の贖いをしたと思った。僕の罪業が彼を殺したと思った。ただ、気吹戸主が命を賭して伝えたのは、その事ではない。
「吾(あ)と汝(なれ)を隔つモノは、残らず滅ぶ」
翡翠の翼を生やす女は、百合に擬態した伊邪那美(いさなみ)ではない。
『人形遊びはやめ、女を離せ』
七夕の別れから、一度も来ない百合。
僕の前にいるのは、伊邪那美に憑かれ、操縦された百合本人だ。
戒めの蔓蛇が枯れ、ぷつぷつ切れる。踊っているのは、ぐずぐずに腐食した昼顔の葉と、揉みくちゃにされた草摺り衣の破片。
『ねのくにそこのくにに、いぶきはなちてむ』
気吹戸主(いぶきどぬし)は、僕が百合に反魂を施す際、触媒に用いた神だ。
『……此持出往。此加々呑。此気吹放。此佐須良比失』
花神(はなかみ)の彼を砕いたのは、百合の姿で唱えられた祝詞(のりと)だ。
樹花草木にも寿命があり、人と同じく神も死ぬ事がある。
彼は僕の禁忌の贖いをしたと思った。僕の罪業が彼を殺したと思った。ただ、気吹戸主が命を賭して伝えたのは、その事ではない。
「吾(あ)と汝(なれ)を隔つモノは、残らず滅ぶ」
翡翠の翼を生やす女は、百合に擬態した伊邪那美(いさなみ)ではない。
『人形遊びはやめ、女を離せ』
七夕の別れから、一度も来ない百合。
僕の前にいるのは、伊邪那美に憑かれ、操縦された百合本人だ。
ファンタジー
公開:19/03/15 23:00
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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