人間大黒柱

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父ちゃんは一家の大黒柱だ。
代々受け継いだ五階建ての木造家屋は、国の重要文化財に指定されている。相当古い建物ではあるが、一階の座敷の中央にある「人間大黒柱」の存在が高い評価を受けているのだろう。
今日も父ちゃんは黒々とした肉体を光らせ、歯を食いしばって建物の全重量を肩に乗せて頑張っていた。
「俺の親父も爺ちゃんも、代々この職を担ってきた。お前も早く人間大黒柱を任せられる男になれよ!」
「うん!」

ところがある日、父ちゃんの腹筋にヒビが入った。このままでは近いうちに腹筋は崩壊するに違いない。
だけど中学生のぼくの肉体では、到底父ちゃんの代わりは務まらない。
「あたしがやるよ」
ぼくに代わり、姉ちゃんが人間大黒柱の職を引き継ぐことになった。
「あたしは中継ぎだからね。早く大きくなってあんたが大黒柱になるんだよ!」
「うん!」

ぼくは一刻も早く大黒柱になるため、今日から腹筋を鍛え始めた──。
ファンタジー
公開:19/03/15 13:10
更新:19/03/15 15:45

渋谷獏( 東京 )

(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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