オマチドゥー

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「芋焼酎、ロックで」
喉の渇きを覚えていた俺は、受け取ったグラスを一気に呷った。
「オマチドゥー」
鳥の顔をしたバーテンダーが奇妙な声を上げる。
「不味くはないな⋯⋯」

巨大な刃を持つ耳の戦車。
鳥人間の跨る奇兵隊。
突如、街を襲ってきた異形の群れ。
多くのニンゲンが楽器の形をした拷問器具に掛けられたが、俺は頭に布を被ってこのバーにしけ込んだ。廻りの鳥人間は知能が低く、俺に関心を持つものは居ないようだ。
「オマチドゥー」
屋上では真っ赤な心臓がノルウェイの森を演奏している。
鳥人間はニンゲンたちと手を繋ぎ、くるくるくるくると廻り踊る。
炙った蟲を頬張り、焼酎で胃の腑へ流し込む。
「クソッ⋯⋯」
地上へと繋がる穴の上で、鳥人間の王がニンゲンを呑み込んでは排泄する。
生まれ変わった彼らは、皆一様に笑っていた。
「オマチドゥー」

俺は卵殻のバーをあとにし、地上に堕ちる穴へと歩き始めた──。
ファンタジー
公開:19/03/15 12:44
更新:19/03/20 23:55

渋谷獏( 東京 )

(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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