夕暮れの町

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夕暮れの町。小さな小屋の古びたベッドに男女が腰掛ける。
男はギターを鳴らして暖炉の炎を眺め、女は終わる世界を窓から眺め、歌った。
ひとしきり歌い終えた二人は、盗んだパンとウイスキーで夕食を済ませ、煙草に火を点けた。

思えば、隋分と遠くまで逃げて来た。
故郷を離れ、荒野を抜け、同じく逃亡する彼女に出会い、誰もいないこの町に辿り着いた。
俺は彼女の名前を知らないし、知らなくても問題は無い。どうせ、世界には二人だけだ。

私の故郷はもう無い。
家族で故郷を飛び出し、先ずは母を捨て、次いで父を捨てた。
最後に妹を捨て、車の燃料が尽きかけたところで彼に出会い、行動を共にした。
彼の名前は知らないし、知る必要も無い。この世界は二人のものだから。

ベッドに寝転び、抱き合いながら互いの孤独に寄り添い合う。
芯まで冷えた二人の身体を、夕暮れが包む。

巨大な彗星が落ちたあの日以来、世界は夕暮れのままだ。
その他
公開:19/03/15 11:48

TAMAUSA825( 東京と神奈川 )

アイアムジャストアサラリーマン

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