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彼女の実家に挨拶にいった日の真夜中。トイレに行こうと布団を出ると、彼女が言う。
「あと5分待てない?」
「無理」
「じゃ、急いでね」
僕は生返事をして部屋を出た。
トイレは汲み取り式で、右の壁に日めくりが掛かっていた。
『呑み込む前に味わおう』
「?」と思っていると、背後の扉がノックされた。
「入ってます」と小さな声で答えると、扉が軋んで、尻に風が当たった。左肩越しに振り向くと、扉がパタンと閉まるところだった。
慌てて立ち上がったが、足が痺れていて、つい、右の壁に手をついた。
『立ち上がれば見えてくる』
日めくりが、翌日分に変わっていた。
布団に戻ると彼女が、
「大丈夫だった?」と言った。
「誰かが日めくり…」
と言い掛けると、彼女は頷いた。
「あの日めくり、リース契約だから。毎日0時に捲りにくるの。説明しとけばよかったね」
「リース…」
僕たちは、この春結婚した。
「あと5分待てない?」
「無理」
「じゃ、急いでね」
僕は生返事をして部屋を出た。
トイレは汲み取り式で、右の壁に日めくりが掛かっていた。
『呑み込む前に味わおう』
「?」と思っていると、背後の扉がノックされた。
「入ってます」と小さな声で答えると、扉が軋んで、尻に風が当たった。左肩越しに振り向くと、扉がパタンと閉まるところだった。
慌てて立ち上がったが、足が痺れていて、つい、右の壁に手をついた。
『立ち上がれば見えてくる』
日めくりが、翌日分に変わっていた。
布団に戻ると彼女が、
「大丈夫だった?」と言った。
「誰かが日めくり…」
と言い掛けると、彼女は頷いた。
「あの日めくり、リース契約だから。毎日0時に捲りにくるの。説明しとけばよかったね」
「リース…」
僕たちは、この春結婚した。
その他
公開:19/03/15 10:27
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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