新たな一歩

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一歩、家の外に踏み出す。何千回と繰り返したことなのに、この感覚は初めてだ。空気が私の肌に馴染んでいく。太陽が正しく私を照らしてくれる。
街を歩く私の歩調は以前よりも速い。地面を踏みしめるたびに実感する。
「私は女!」
そう、私は性転換したのだ。

待ち合わせ場所のレストランに入店すると、男性の店員さんと目が合い、緊張する。
「何名様ですか?」
友人マリの姿が見えなかったので、すらっとした自慢の指をピンと二本立てる。
「ご案内します」
いたって普通の接客に安心して、出されたお冷を一気に飲み干す。何から何まで私とフィットする。試しに氷を一つ口に入れてみる。氷ってこんなに甘かったっけ。
氷と戯れていると鈴の音が私の耳に心地良く響く。片手をあげて、今来たマリに目配せする。マリが笑顔で近付いて来て言う。
「久しぶり! じゃなくて、はじめまして! サキちゃん! 今日も綺麗だね!」
私は女!
私はサキ!
その他
公開:19/03/13 22:15

上北 うてな

行き場を失い、メモ帳に彷徨うネタ達をここで消化&昇華させてます。

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