ハネムーン

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安息日の昼。緑の丘は静まり返って、湖の水面は張りつめている。湖畔の森林から隔絶された白い大きな洋館は、木製の庇の下の殆どの窓のカーテンを閉め、この静的な風景画の一部であった。
燭台も灯らぬ館のリビングは夜より暗く、広いテーブルには一杯に食器が置かれ、中央に蜂蜜酒のボトルと2つのワイングラスが用意されている様は奇妙そのものだった。
ガチャン、と巨大なドアが開き、1人の女が部屋に入ってくる。
「また蜂蜜酒だけ飲んでないじゃない!」
女はボトルの前に座り、自分のグラスに酒を注いで飲み干した。女の向かい合わせの椅子には、男のミイラがぐったりと座っていた。

ドアが開き、1人の男が部屋に入ってくる。
「なんだ、また蜂蜜酒だけ飲んでないじゃないか!」
男はボトルの前に座った。男の向かい合わせの椅子には、女のミイラがぐったりと座っていた。

この静かな緑の丘の洋館で、2人が再会することは二度となかった。
恋愛
公開:19/03/13 18:41
更新:19/03/13 18:42
新生活

北瓜 彪

ショートショート講座(2019年7〜9月期)にも参加
しました。
皆様宜しくお願いしますm(_ _)m

※アルファポリス
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/664452356
でも活動しています。SS講座で提出した作品「ファンフラワーに関する見聞」「大自然」もそちらで公開しております。
 

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