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灰色の空は、もう春だというのに冬に逆戻りしたみたいだった。
待つのはいつも僕だった。
「女の子を待たせるなんて最低」
「一回でも遅刻したら別れる」
付き合い始めた頃に君に言われた言葉。今になって思えば、デートすることへの照れ隠しで、仮に遅刻しても大好きなアイスクリームを奢ってあげたら「今度だけだよ」と許してくれたかもしれない。
ここに立っていると、色んな事を思い出す。君を待っている時のふわふわした気持ち。波打つ陽だまり。風の香り。君の笑顔。舞い散る雪の中で繋いだ指先の温度。そして、涙。
ふと視界に何かが通りすぎて空を見上げると、ちらちらと雪が踊っていた。
なごり雪か。
酔っ払ったような雪の動きを目で追いかけると、不意に懐かしい声がした。
「おまたせ」
弾かれたように振り向く。
君の幻が浮かんで、消えた。
咄嗟に伸ばした指先にふわりと雪が落ちる。
春の雪は僕の手に微かな温もりを残して消えた。
恋愛
公開:19/03/15 00:00
更新:19/03/14 19:20
春の雪✕恋愛

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ショートショートって難しい。
最初の頃は400字は短すぎるなんて思ってましたが、色々書くうちに400字に無限の可能性を感じるようになりました。

読んだ人の心が少しでも動いたらいいな。何かを感じてくれたらいいなと思って書いてます。

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