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雪の中から土筆が飛び出しているのを見ると幼い頃の祖母との会話を思い出す。
祖母が幼稚園の迎えに来てくれたのは、仲良しの友達と喧嘩した日だった。きっかけは友達の手下げ袋についていた人形を、私が転んだ拍子に引き千切ってしまった事だった。友達は怒って私を叩いた。私も故意ではなかったから、腹を立てて応戦した。結局、保育士さんの前で二人でごめんなさいをしたけど、その日はそのまま口をきかなかった。
祖母と手を繋いで帰る途中、道端で雪の中から土筆が顔を出していた。
「土筆は冬眠してる動物よりも先に雪の中から出てきて、春になった事を動物達に知らせてるんだよ」
祖母が私の頭を撫でた。
「大丈夫。春がくれば雪は解ける。明日がくれば仲良しに戻れるよ」
私が喧嘩した事を知っているのが不思議で、でもその言葉で、雪が解けるように私の心は軽くなった。
その友達と翌日仲直り出来たのは祖母のおかげだと、今でも感謝している。
その他
公開:19/03/15 00:00
春の雪✕エッセイ風

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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