春一番発生装置

10
13

永遠の冬が始まって50年。春が来ない原因は大気汚染とも太陽の寿命とも言われていた。ありとあらゆる方法が試されたが、春はやって来なかった。
ドームの中で子供が古びた絵本を広げていた。
「はるいちばんが、さくらにあいさつしたらはるになりました」
子供が首を傾げた。
「はるってなぁに?」
母親は子供の頭を撫でた。
「暖かい季節のことよ。春一番が吹いたら春が来るのかしらね」
「それだ!」
突然、近くにいた男が子供から絵本を奪い取って叫んだ。
「春一番だ。なんでそれに気づかなかったんだ!」

一ヶ月後、超凄い技術で春一番発生装置が完成した。そして、萎れた桜に春一番発生装置の風をぶつけると桜はみるみる元気になり、蕾を膨らませ一気に開花した。満開となった桜から光の柱が天に伸びた。光は分厚い雲を貫き、地上に太陽の光が降り注いだ。
春の到来だ。
降り積もった雪は春を歓迎するかのようにキラキラと輝いていた。
SF
公開:19/03/15 00:00
更新:19/03/14 22:41
春の雪✕スチャラカSF

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容