越中守の雪鶯

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その昔、細川越中守は雪鶯と呼ばれた真っ白な鶯を飼っていた。その鶯は粉雪を集めて形にしたように美しく、越中守が300両もの大金を払って行商から手に入れたそうな。その時代は白蛇や白馬は神様の使いとして扱われていた頃。当然、雪鶯も大勢の使用人が大切に世話をしていた。

季節は早春。なごり雪が舞うある朝の事。籠の中の雪鶯が消えている事に使用人の一人が気がつき、屋敷は大騒ぎとなった。

ホーーーホケキョ

どこからともなく美しい囀りが聞こえた。しかし、使用人達がいくら探しても鶯は見つからない。
やがてその騒ぎは越中守の知る事となり、使用人達は切腹を覚悟した。
「誠に申し訳ございませぬ」
越中守は鶯の囀りに耳を傾け、こう言った。
「もうよい。鶯は籠に入れて姿を愛でるものではなく、囀る声を愛でるものであった。籠の中は、さぞ窮屈であったろうな」
それきり越中守は雪鶯の事を二度と口には出さなかったという。
その他
公開:19/03/15 00:00
更新:19/03/13 15:11
春の雪✕時代物 落語でおなじみの細川様

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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