コトノハの樹

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店の中央には「コトノハ」、と呼ばれる巨大な樹が植わっている。

珈琲を一杯頼むと、樹に生えた葉っぱを一枚もいでトースターで軽く焼いてくれる。しばらくすると、ふっくらと膨らんだコトノハ焼きができあがる。
さっそくバターを乗せた葉っぱのお菓子に齧りつく。
すると、鳥人間の跨る騎兵の群れ、劫火に覆われる街、楽器の音色に合わせて鳥人間とダンスするニンゲンたち、という情景が頭に流れ始めた。
「これは朝から強烈だ!」
このお菓子、美味しさもさることながら、幻覚作用で食べた人間の頭に奇想天外なお話を見せてくれる。
「さて、どんな物語が見えましたかな?」
マスターはおどけた調子で応えると、珈琲のおかわりを注いでくれた。
「葉っぱによって変わるのか、気分によって変わるのか!」

ゴチソウサマを言って卵殻の店の梯子を降りていくと、街中のニンゲンが全て鳥人間に変わっていた。
「アハハ、まだ幻覚が残ってるね⋯⋯」
ファンタジー
公開:19/03/14 19:05

渋谷獏( 東京 )

(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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