人気者のハゲ

クラスメイトの菊田君はハゲている。
普通ならハゲはバカにされ、いじめの対象になりやすい。
でも菊田君は人気者だ。今日も菊田君のところに女子がお願いしにやってきた。
「ねぇ、菊田君…その…吹いてもいい？」
菊田君はにっこりと微笑んだ。窓辺に移動すると「さあ吹いて！」と自らの頭を差し出す。
女子は大きく息を吸い込むと菊田君の頭を思いっきり吹いた。
すると菊田君の頭に生えていた綿毛が一斉に空へと飛んで行く。
「ありがとう。散髪する手間が省けたよ」
菊田君は女子にお礼を言った。
「次は俺が菊田の頭を吹くんだからな！」
そう言ったのはこのクラスの不良生徒だ。皆、菊田君の頭を吹きたくて毎日学校にやってくる。
菊田君の頭は髪の代わりに綿毛が生える変わった体質だ。
その綿毛は脆く、吹けばたんぽぽのように飛んで行く。
皆、菊田君のことをその体質と紳士的な態度にちなんで「ダンディライオン」と呼ぶ。