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その日、男は人を殺した。
被害者は悪徳金融会社社長、郷田。
男はこれまで汗水たらして懸命に稼いだお金をこの郷田にむしり取られてきた。
だから男には罪の意識は無かった。
むしろ、正義を実行した余韻すらあった。
彼が殺されたのは今まで悪行を重ねて来た報いだ。因果応報なのだと。
最初は失敗しないだろうかと不安だった。
だが、いざ覚悟を決めると案外あっけなかった。
冷静になり、辺りを見渡してみると郷田が咄嗟に投げた一万円札が床に散らばり、お札は郷田の血で真紅に染まっていた。
数ヶ月を掛けて念入りに計画を練った甲斐があった。
男は安堵し外に出た。すると、春には珍しく雪が降っていた。
男にはまるで天から天使が舞い降りて来るかの様に映った。
その天使達は人間達の穢れてしまった色んな物を清めるかの様に静かにゆっくりと地面に降り立ち、辺り一面を白く覆い隠した。
次の瞬間、男は薬を飲み込み、静かに天に昇った。
公開:19/03/14 16:08
更新:19/03/14 16:23

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