花神の庭~蛙手(かえるで)

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「おい花守り(はなもり)」
――また出た。苛々を募らせ庭に降りる。『起き抜け』は機嫌が悪い。身体が構築され、魂が馴染む一寸。骨肉の重さ、血脈と心拍を感じ、生身になる合間。冬に向け、その時間は徐々に長くなる。

「今度は何です、気吹戸主(いぶきどぬし)」
ぶしゃ~~!
顔面に水鉄砲を食らい、僕は尻餅をついた。井桁(いげた)に陣取る気吹戸主が、蛙の姿で、ゲゲゲと笑う。
二度ならず三度まで。己に怒りや憎しみの感情を認め、僕は気が荒くなった。
「あらしほのしほのやおあひのやしほじの、しほのやほあひにいます、はやあきつひめといふかみ。もちかがのみてむ(小声)」
ざばっ!
井戸水が溢れて蛙を流す。祝詞(のりと)で海水に変じ、激烈に沁みるはずだ。ばたばた暴れる手足は、緑が抜け、まるで黄葉の楓。
詞(ことば)は言霊。それ自体が力を持つ。やり方次第で攻撃も出来る。
こうして僕は、禁忌を犯す事にも慣れていく。
ファンタジー
公開:19/03/14 12:00
更新:19/03/14 17:03
楓:遠慮・自制・節制 ※カエデの語源は『蛙手』。 葉形が似ているからという説あり

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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