いわくつき物件

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念願の漫画家デビューを果たした私は、地元を離れ、契約した出版社の在る東京へ引っ越して来た。

田舎を出て、初めての都会生活。
住む所は、予め出版社の人が用意してくれていた。

そこは、出版社近くの二階建てアパートで、外見も内装も綺麗な物件だった。しかも、家電付きで、家賃が格安。
その理由は、アパート前が墓地になっているためだった。

「ちょっと不気味な雰囲気がするかもしれないけど、大丈夫。幽霊が出たという話は聴いたこと無いから」

担当編集者の男性は、他人事のように笑いながら言った。

私は少し不安を感じたものの、売れるまでの我慢と思い、このアパートに入居した。


心配していた心霊現象は、1ヶ月経っても、起こらなかった。
その代わり、二階の住人が毎朝エアロビクスをしているようで、上からドスドス足音が響いてくる。
床が抜けて二階の住人が落ちて来たら、幽霊よりも恐ろしい。
その他
公開:19/03/14 10:51

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