いざない

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残業に疲れて夜道を歩いていると、開業医のビルの入口がぼんやりと光っているのが見えた。その幻想的な明るさの中で、小さな影がこちらを向いていた。影は、左腕を体の前で横切らせた最敬礼をしていた。すると、影が言った。
「ようこそ、まほろばホテルへ。」

次の瞬間、私は薄暗いパーティー会場にいた。目の前に影の主である燕尾服姿の羊がいて、私の前から去っていった。周りの人々は上品にケーキを取り、シャンメリーを飲み、優雅に踊っていた。私もテーブルの料理を堪能し、若い淑女とダンスをした。
気づくと会場は壮麗なロココ様式のホールと化していた。羊を見つけて尋ねたが、
「ここは貴方方の為のホテルです。心ゆくまでご滞在下さい。」
と夜景を眺望しながら言われた。私も窓外を眺めた。
「あの中に私もいるんだ。あそこに戻りたい。」
羊は目を閉じ、最敬礼をした。
私はもとの夜道に佇んでいた。家を目指して、私はまた歩き始めた。
ファンタジー
公開:19/03/12 19:31
更新:19/03/12 19:34

北瓜 彪

ショートショート講座(2019年7〜9月期)にも参加
しました。
皆様宜しくお願いしますm(_ _)m

※アルファポリス
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/664452356
でも活動しています。SS講座で提出した作品「ファンフラワーに関する見聞」「大自然」もそちらで公開しております。
 

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