お払い箱

昔々、あるところに不思議な箱がありました。その箱に不要なものを入れるとお金が出てくるのです。
不要なもの処分出来る上、お金が手に入ると人々は大喜び。気前のいい箱のことを皆がお払い箱と呼びました。
箱には様々なものが入れられます。多くはゴミで中には役立たずの家畜や死体を入れる者もいました。
それにも箱はお金を払います。

ある日、富豪が箱の中に生きた人間を入れました。
「家督を継がせるのに必要なのは息子だ」
富豪は病気の孫娘を箱に入れ、金に換えました。
その夜、富豪の娘は家を抜け出し箱を開け、中のものを必死にかき出しました。
良くないものが外に出る。それでも娘は箱を漁り、箱の隅にいた我が子を見つけ出しました。
娘は我が子を抱きしめ、二人で幸せに過ごしましたとさ。

ああ、箱から出た良くないものは人々を襲ったようです。
娘にとって希望の残った箱は人々にとっては開けてはならない箱だったようです。