新生活の音

三月も半ばになり、どこかから家具を運び込む掛け声や組み立てる音が聞こえてきた。
新生活の音だ。

そういえばあの頃は、この座椅子も他人行儀で居心地悪く、テレビは不親切で扱えず、ベッドは緊張して固かったっけな。
なんて、一人暮らしを始めたてだったかつての自分をつい思い出してしまう。
彼らとはいまや家族みたいなものだけれど、あの頃とても仲のよかった期待や高揚感とは、そういえば最近顔を合わせていない……

そんなことを考えていると、インターホンが鳴った。
この音も昔はもう少しよそよそしかったのにな。

「初めまして、今年からこの階に引っ越してきました。そこの大学の学生なのですが、よろしくお願いします」
「あ、どうもわざわざありがとうございます。僕も同じ大学で、先輩だけどよろしくね」
「そうなんですか！じゃあまた会えますね！」

どうやら、しばらくぶりだった彼らがこの春またやって来てくれたらしい。