私はコーヒーが飲めない

4年間付き合っていた彼氏と別れた。
私の彼氏はコーヒーみたいな人だった。どこがと言われても分からないけど、髪の毛が黒いところとか、えーっと...
いや、そもそも彼氏が喫茶店でいつもコーヒーを頼んでいたからだ。砂糖もミルクも入れない。
だから、私の中での彼氏のイメージはコーヒーなのだ。熱々のコーヒー。

私の中にはティーカップがある。
私はコーヒーをずっと、スプーンでくるくると掻き混ぜていた。
熱いと思っていたそれは、別れ話のあとには温くなっていた。 淹れたてだったブラックコーヒーは温く苦い黒い液体になった。
私はコーヒーなんて苦くて飲めないから、いつまでも掻き混ぜる。
友達に慰めてもらった。ミルクを入れ、角砂糖をいくつも放り込んでみた。
でも温くなってしまったコーヒーは砂糖なんか中々溶かせなくて、塊が底に溜まっている。
私は混ぜ続けて、飲み干せるようになるのを待っている。