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平日の午後、閑散としたショッピングモールの駐車場にガムテープが落ちていた。私は妻に「後でスタバで会おう」と告げ、そちらに向かった。
何もない駐車場は、何もない青空の下で無限遠の地平線に囲まれている。私は、その空虚な広さに喘ぎながら、静かに立っているガムテープの前にようやく辿り着くと、そのまま倒れ込んだ。ガムテープの芯の穴が目の前にあった。その穴から見ると、地平線の全てが私の視界に収まっていた。
「これが輪の力…」
「何をしているっ!」
突如、怒号が響き、巨大な靴が視界を塞いだ。
私はガムテープを手に立ち上がり、慌ててテープを引き剥がすと、顔の輪郭をガムテープでグルグル巻きにしていた。携帯が鳴る。
そしてガムテープの芯を警備員にぶつけると、地平線に向かって全力疾走を開始した。宇宙の全てが見えた。携帯が鳴っている。顔の真ん中を風が吹き抜けていくのがくすぐったくて、私は笑い続けていた。
何もない駐車場は、何もない青空の下で無限遠の地平線に囲まれている。私は、その空虚な広さに喘ぎながら、静かに立っているガムテープの前にようやく辿り着くと、そのまま倒れ込んだ。ガムテープの芯の穴が目の前にあった。その穴から見ると、地平線の全てが私の視界に収まっていた。
「これが輪の力…」
「何をしているっ!」
突如、怒号が響き、巨大な靴が視界を塞いだ。
私はガムテープを手に立ち上がり、慌ててテープを引き剥がすと、顔の輪郭をガムテープでグルグル巻きにしていた。携帯が鳴る。
そしてガムテープの芯を警備員にぶつけると、地平線に向かって全力疾走を開始した。宇宙の全てが見えた。携帯が鳴っている。顔の真ん中を風が吹き抜けていくのがくすぐったくて、私は笑い続けていた。
その他
公開:19/03/12 10:33
更新:19/03/12 19:51
更新:19/03/12 19:51
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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