老婆とパンプス

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商店街にある靴屋に若い女性がやってきた。濡れた手にはヒールが折れたパンプスが握られている。
店主は乱雑に置かれた箱の山から文字を辿る。

ヒールのある靴を毎日履くようになったがなかなか慣れない。かかとが痛く、おまけに変な歩き方だ。
毎朝パンプスを履くのが憂鬱で仕方ない。帰宅しても翌朝の事を考えると気が滅入った。
その日は大雨で会社を出ると派手に転び、パンプスのヒールがポキンと折れた。このままじゃ帰れない‥パンプスを脱ぎとぼとぼ歩く。寂れた靴屋を見つけ恐る恐る入ると老婆は私の顔を見るなり
「あなた、社会人一年目だね?じゃあこれがいいわ」
そう言ってどこにでもありそうなパンプスを差し出す。
言われるがまま履いてみる。不思議と足にフィットし全く痛くない。
それ以来毎朝パンプスを履く度に私の心が躍った。

老婆が出した靴の箱には達筆な字で「躍動」と書いてある。
客が来る。老婆は次の文字を辿る。
その他
公開:19/03/13 10:20

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