朝ご飯

11
25

目を覚ますと、目の前に息子の顔があった。
昨夜、私はこの幸せそうな寝顔を見ながら眠ってしまったようだ。
「起きないと遅刻するよ」
優しく息子の髪にふれると息子は大きな伸びをしながらゆっくりと目を開けた。
「ママ、おはよう」息子が言ったので「おはよう」と私も返した。
一緒に階段を降りていくと炊きたてのご飯とベーコンの焼けた香ばしい匂いがした。夫がYシャツを捲り上げフライパンを洗っている。テーブルの上には朝ご飯がきちんと用意されていた。
私は夫に「おはよう」と言った。
夫が「さあ食べよう」と言ったので私たちは席に着いた。
「あれ、ママのは?」
「今日から二人分だけだよ」
昨日まであった私の朝ご飯だけなかった。
「今日で一年だから。パパね、強くならなきゃって思うんだ」
夫は自分に言い聞かせるように言った。
そしてそれは私の旅立ちを意味していた。
「昨日、ママの夢を見たよ」息子が嬉しそうに笑った。
ファンタジー
公開:19/03/13 07:43
更新:19/03/13 18:03

杉野圭志

元・松山帖句です。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容