花神の庭~葉見ず、花見ず(はみず、はなみず)下
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僕を蚊帳の外に、骨肉の争いが展開する。僕は物理的に口を挟めず、出来たとしても、その気力も失せていた。
「諦めよ母上。父上は戻らぬ。影は影に、我は黄泉へ流せ」
無駄だ軻遇突智(かぐつち)。伊邪那美(いさなみ)は狂った。腐れた躯を暴かれ、岩戸で拒絶され、壊れた。誰の言葉もどんな祝詞(のりと)でも、救済は不可能だ。
僕自身、吐きそうに冷淡だった。後の展開も予想が付いた。
――ぐしゃり。
握り潰され、粉々に砕けた白い火花が、蛍の様に合歓の花の様に、狂った女と人形を照らした。吐息に吹かれた火の粉が登り、上空へ根を張る尾花へ吸い込まれた。
「望み通り、黄泉の泥に沈めてやった」
抜け殻の人形を撫で、狂神は艶やかに嗤っていた。
「千々の禍火(まがつひ)よ、種々の命に宿り、地上の増え栄える毎に、諍い猛り、天の災い地の災いと燃え、悉く焼き尽くすが良い」
これが巡り巡って僕らを灰にした、紅蓮の業火の元なのだ。
「諦めよ母上。父上は戻らぬ。影は影に、我は黄泉へ流せ」
無駄だ軻遇突智(かぐつち)。伊邪那美(いさなみ)は狂った。腐れた躯を暴かれ、岩戸で拒絶され、壊れた。誰の言葉もどんな祝詞(のりと)でも、救済は不可能だ。
僕自身、吐きそうに冷淡だった。後の展開も予想が付いた。
――ぐしゃり。
握り潰され、粉々に砕けた白い火花が、蛍の様に合歓の花の様に、狂った女と人形を照らした。吐息に吹かれた火の粉が登り、上空へ根を張る尾花へ吸い込まれた。
「望み通り、黄泉の泥に沈めてやった」
抜け殻の人形を撫で、狂神は艶やかに嗤っていた。
「千々の禍火(まがつひ)よ、種々の命に宿り、地上の増え栄える毎に、諍い猛り、天の災い地の災いと燃え、悉く焼き尽くすが良い」
これが巡り巡って僕らを灰にした、紅蓮の業火の元なのだ。
ファンタジー
公開:19/03/13 00:00
更新:20/03/05 01:29
更新:20/03/05 01:29
彼岸花の別名:葉見ず花見ず
・死人花・捨て子花など
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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