花神の庭~葉見ず、花見ず(はみず、はなみず)中

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「何を申すイサナ?」
伊邪那美(いさなみ)の問いは、即ち僕の問いだった。
「汝の身は、吾が夫、伊弉諾(いさなき)の影より紡いだ。汝は吾が夫。息子ではない」
創り主を生みの母と称んでも差し支えないが、原初の僕の言葉は、比喩とは異なって聞こえた。不吉な予感が強まる。
「影を紡いで命は宿らぬ。貴方がこの身に吹き込んだ、魂の話だ」

頭を殴られた気がした。――そんな、まさか。
怪訝そうに、伊邪那美は首を傾げた。
「吾を焼いた焔は、あれは子ではない、災厄じゃ。吾と汝を離した元凶じゃ。流れ出たなり、汝が斬り捨てたではないか、のう伊弉諾?」
軻遇突智(かぐつち)――伊弉諾と伊邪那美の末子。産褥で伊邪那美を焼き殺し、伊弉諾に殺された禍火(まがつひ)の神。
「仮の種火がほざくな。……思い出せ伊弉諾。汝の影は魂の欠片。身さえ残せば、汝は吾が許へ帰るのじゃ」
胸に瞬く白い彼岸花を、掌が押した。
ファンタジー
公開:19/03/13 00:00
更新:20/03/05 01:25
軻遇突智は『日本書紀』より。 別名を加具土命・火産霊とも。

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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