花神の庭~葉見ず、花見ず(はみず、はなみず)上

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「イサナ」
「呼ぶな」
呼ぶ声に首を振り、背ける。角髪は解けて背を流れ、裸体の胸で、白い彼岸花の様に、弱々しく火が瞬く。
僕は初めて僕の姿を直接確認したが、まさに人形だ。完全な均等、寸毫の瑕も無い精緻。造作は伊邪那美(いさなみ)を男に直した様。
伊弉諾(いさなき)は彼女の兄でもあると云う。洋の東西問わず、珍しい話ではないけれど。動き、喋る程に異様さが際立つ。
「起きよイサナ」
「否。このまま朽ちる。その方が幸せだ」
聞いた台詞。いつぞやの白い葬列の幻。あれは原初の記憶の反映だったか。
「汝(なれ)は吾(あ)がものぞ。吾に従え。吾を呼べ。この庭で再び夫婦となり、睦まじく暮らすのじゃ」
原初の僕は、微かに瞼を上げて創り主を見た。
無気力に翳った瞳、静かな諦観、今の僕と奇妙にそっくりな僕は、哀れむ様な、絞り出す様な声で告げた。
「貴方こそ目を覚ませ。……我は夫ではない。貴方の息子だ」
ファンタジー
公開:19/03/13 00:00
更新:20/03/05 01:22

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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