花神の庭~翠帳合歓(すいちょうごうかん)‐承
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「きこしめさむ」
「きこしめさむ」
――パシン!
――チィン!
埒(らち)が明かない。
舌打ちを呑んで構える。祝詞(のりと)を使う花神(はなかみ)など前例がない。
「たかやまのすえ」
「ひきやまのすえより」
紫陽花は終わった。花が萎めば花神も鎮まる。雪降り月にあらゆる花が眠る様に、神であり花でもある花神は、命の循環に従う。
これが本当に、ただの花神なら。
「およし。汝(なれ)は吾(あ)に勝てぬ」
知った声。百合と違う。僕が庭に放り込まれた時も聞こえた。いつもいつも、頭の隅にこびり付く声。
翡翠(かわせみ)の背に別の樹が浮かぶ。鈴生りに火花を孕む合歓(ねむ)の花。人間だった僕の街を焼いた色。
――パン!パンッ!
「さくなだりにおちたきつ」
翡翠の羽根が火流と化して降り注ぐ。膝を突く僕の胸へ尖った嘴が急降下する。
「汝は吾がものぞ、伊弉諾(いさなき)」
火照った肩を、薄絹がしっとり抱いた。
「きこしめさむ」
――パシン!
――チィン!
埒(らち)が明かない。
舌打ちを呑んで構える。祝詞(のりと)を使う花神(はなかみ)など前例がない。
「たかやまのすえ」
「ひきやまのすえより」
紫陽花は終わった。花が萎めば花神も鎮まる。雪降り月にあらゆる花が眠る様に、神であり花でもある花神は、命の循環に従う。
これが本当に、ただの花神なら。
「およし。汝(なれ)は吾(あ)に勝てぬ」
知った声。百合と違う。僕が庭に放り込まれた時も聞こえた。いつもいつも、頭の隅にこびり付く声。
翡翠(かわせみ)の背に別の樹が浮かぶ。鈴生りに火花を孕む合歓(ねむ)の花。人間だった僕の街を焼いた色。
――パン!パンッ!
「さくなだりにおちたきつ」
翡翠の羽根が火流と化して降り注ぐ。膝を突く僕の胸へ尖った嘴が急降下する。
「汝は吾がものぞ、伊弉諾(いさなき)」
火照った肩を、薄絹がしっとり抱いた。
ファンタジー
公開:19/03/10 21:00
更新:19/03/12 18:14
更新:19/03/12 18:14
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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