世界のバグ

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目覚めると世界は何もなかった。
しばらくの間は真っ白な空間が広がり、徐々に天井や壁が現れ、蒲団に包まれた自分に戻る。
「やれやれ⋯⋯」
外に出ると、やはり真っ白な空間だ。
道路が現れるのを待ち、俺は彼女の居る喫茶店へと急いだ。

「Kくん遅い!」
「ごめんごめん、道が出るの遅くてさ」
彼女はきょとんとした顔をした。
「え?」
「アハハ、ジョークだよ!」
最初は気のせいかと思うほどの遅れだった。
それが段々と遅くなり、今では俺の見てない場所は、ただの真っ白な空間が広がっていた。おそらく昔からこうだったに違いなく、何かしらのバグで世界がリセットされるのが遅れ始めたのだと思う。
だからこの女も、こうして俺が横を向いてから前を見ると⋯⋯崩れかかった人間の塊になる。
そして5秒くらいすると元に戻る。
「ん、どした?」
「いや、可愛いなと思ってさ」

見上げると、太陽が滲むようにゆっくりと現れた──。
SF
公開:19/03/10 19:22

渋谷獏( 東京 )

(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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