魔王の定め

オレ、魔王。
今宵はとある国に来ている。もちろん滅ぼすために、だ。
しかしオレが手を出す出さない関係なく、国の様子がおかしい。
どうやら、この国にとって今宵は特別な日らしい。
国中を優しさに溢れた空気が包んでいる。
どこか哀しみに満ちた空気も流れている。
オレの大嫌いな空気感と、大好きな空気感。その二つが入り交じり、なんとも言えない気分にさせられる。
そうは言っても、オレは魔王。国の特別な事情など知った事ではない。
ただただ世界征服のため、問答無用で滅ぼすだけ。それがオレの定め。
そう、定めなのだ。

オレ、魔王。
いずれどこかの国で倒される運命にある。
さぁ、勇者よ。早くこの国に来い。オレは今から、ここで暴れるフリをするぞ。
人は勧善懲悪というものが大好きなのだ。
この国の人々の心を少しでも晴らす事が出来るのならば、オレはこの国で……。

新たな一歩を踏み出すために悪も必要な時が、ある。