ハローライフ

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「新生活、どう?」
「全然だめ。やっぱり今年も新生活市場は厳しいわ……」
すでに新生活を終えた綾子を前に、私は頭を抱えた。
新生活なんて、誰もがうまくいくわけじゃない。
特に今年は新生氷河期と呼ばれるほどに、先行きが不透明なのだ。私ももうすでに、何件のお祈りをいただいたか知れない。
「あの人どうかな。終活真っ只中って感じじゃない?」
「うーん、でも元気そう」
「エントリーくらいはいいでしょ。ポチっと」
私の手元の端末が、エントリーボタン表示を現在のエントリー人数に切り替える。
五八〇人。
これが今回のライバルの数。
そのあまりの多さに眩暈を覚えていると、突然、隣の綾子が光に包まれて消えた。

ついに、か。

少子化の日本での新生活動は、正直無謀だ。
だからもう国籍は問わない。とにかく早く、内定がほしい。

私は焦燥感を募らせながら、輪廻に乗った綾子が新しく宿った音を、意識の向こうで聞いた。
その他
公開:19/03/11 23:41
更新:19/03/19 23:19
新生活

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

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