花神の庭~桔梗風船(あさがほのかざふね)
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轟――――!!
野分が吹き、蔓延る竜胆を薙ぎ掃ったところで、僕は我に返る。掃われた竜胆が滴に結晶し、雨師(うし)の鱗に吸い込まれた。
「情けなや」
身の丈もある袋を担ぎ、横たわる僕の前に仁王立ちする、
「……百合?」
反魂の禁忌で地上に返した。あの時の小さな百合が、呆れ声で息を吐く。
「汝(なれ)は言霊(ことだま)の呪を被った。伊邪那美(いさなみ)の君が植えた疫(えやみ)、我と雨ので祓うてやった」
『雨の』と称ばれた水竜も、雨雲を畳んで降りる。姿は青髪の若者に変じている。
「我には定形が無い故、汝の心を借りたまで。この童女が汝の想い人か?」
にやにや笑う、百合の顔をした花神(はなかみ)。
袋の形と色からして、桔梗。雨師と対をなす、彼女は風伯(ふうはく/風神)だ。
「何故、手を貸すんです?」
雨師と風伯が顔を見合わせ、おかしそうに微笑う。
「己が胸に問え」
薄れる双影に、夕暮れの虹が射した。
野分が吹き、蔓延る竜胆を薙ぎ掃ったところで、僕は我に返る。掃われた竜胆が滴に結晶し、雨師(うし)の鱗に吸い込まれた。
「情けなや」
身の丈もある袋を担ぎ、横たわる僕の前に仁王立ちする、
「……百合?」
反魂の禁忌で地上に返した。あの時の小さな百合が、呆れ声で息を吐く。
「汝(なれ)は言霊(ことだま)の呪を被った。伊邪那美(いさなみ)の君が植えた疫(えやみ)、我と雨ので祓うてやった」
『雨の』と称ばれた水竜も、雨雲を畳んで降りる。姿は青髪の若者に変じている。
「我には定形が無い故、汝の心を借りたまで。この童女が汝の想い人か?」
にやにや笑う、百合の顔をした花神(はなかみ)。
袋の形と色からして、桔梗。雨師と対をなす、彼女は風伯(ふうはく/風神)だ。
「何故、手を貸すんです?」
雨師と風伯が顔を見合わせ、おかしそうに微笑う。
「己が胸に問え」
薄れる双影に、夕暮れの虹が射した。
ファンタジー
公開:19/03/11 18:00
更新:19/03/11 17:53
更新:19/03/11 17:53
桔梗(ききょう・あさがほ):
変わらぬ愛・気品・誠実
※怨霊調伏と魂の洗濯
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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