嘘八百八町夢日記

時の豪商の雇われ料理人だった源三は、主を殺害した廉により大岡越前の裁きを受けることとなった。
「うむ、確かにあの者の非道振りは目に余るものがあったという。それにしても気弱なおまえが思い切ったことをしたの」
「はい、御奉行様どんなお裁きでも」
「そうか、丁度支度が出来たようだ。その大釜を覗いてみよ」
「熱っ！油？まさか、かの大泥棒石川某が処されたという」
「そう釜茹でだ。だが、おまえにも情けをかけるべきところはある。そこでだ、その中に入ってもし生きていられたなら、そのまま放免としよう」
「いや無理無理！御奉行様！」
「源三、夢を忘れたか！」
日の本一の料理人となる夢を抱いていた源三は、その一言で腹を括り釜の中に飛び込むと、見事に奇跡の生還を果たした。
その後源三は、臆病者が喝を入れられ油に飛び込んだという自身の経験から、とある料理を創作した。
"チキンカツ”の誕生である……とかないとか。