花神の庭～顔合はせ

青の綸子（りんず）に帯は梔子。
薄紅の絽（ろ）に帯は柳。
白の縮緬（ちりめん）に帯は銀鼠。
藤の羽二重（はぶたえ）に帯は紫苑。

着物の色は違えど、四つの顔は同じ。さて、どれがどれだ。
「縮緬が夕顔」
ぱち。綸子が扇を鳴らす。朝昼夕夜の顔の花神（はなかみ）。夕顔だけ種が違う程度では駄目か。四つを見分け、真名（まな）も当てろと。
ぱち！
しかも急かす。足元には無数の緑蛇。一度でも違えば、僕は人間雑巾か着物の柄。

分かり易い方から攻めよう。
「朝顔。早川の瀬の瀬織津比売（せおりつひめ）。夜顔。根国底国（ねのくにのそこのくに）の速佐須良比売（はやさすらひめ）」
二つ昇る。あと半分。
「潮の八百曾（やほあひ）の速開都比売（はやあきつひめ）」
バチ！
「……は、夕顔。昼顔は、気吹戸（いぶきど）の気吹戸主（いぶきどぬし）の女装」
昼顔に髭が生え、膨れ面で昇る。

まったく、神の暇潰しは気が張る事だ。