花神の庭~山紫翠鳴(さんしすいめい)
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梅雨の晴れ間、洗濯物を広げ、茶の花神(はなかみ)がくれた新茶で寛いでいると、
チィ――光が僕の髪を掠め、ビィン!と畳に突き立った。
「羽根?」
翡翠の緑と紫を混ぜた、美しい風切り羽根。
括った紐が切れ、髪が傾れる。
チチ、チュイ――ビビン!!
「なっ……!」
湯呑みを放って滑り込む。雨戸を逸れた羽根が着物の裾を畳に縫い留める。何が起きた?突然過ぎて意識が追い付かない。物干しが倒れ、洗濯物が引き裂かれる音が聞こえる。
ビン、バスッ!羽軸が戸板を貫通した。
「かくのらば、あまつかみは」
「あまのいはとをおしひらきて」
ざっ、雨戸が開く。考える間もなく転び出る。
ざわめく紫陽花。滞空する翡翠(かわせみ)が囀る。
「あまのやへぐもを、いづのちわきにちわきて。きこしめさむくにつかみは」
花神が、祝詞(のりと)を――
翼の飛び立つ刹那、知った声が耳に落ちた。
「汝(なれ)は吾(あ)がものぞ、イサナ」
チィ――光が僕の髪を掠め、ビィン!と畳に突き立った。
「羽根?」
翡翠の緑と紫を混ぜた、美しい風切り羽根。
括った紐が切れ、髪が傾れる。
チチ、チュイ――ビビン!!
「なっ……!」
湯呑みを放って滑り込む。雨戸を逸れた羽根が着物の裾を畳に縫い留める。何が起きた?突然過ぎて意識が追い付かない。物干しが倒れ、洗濯物が引き裂かれる音が聞こえる。
ビン、バスッ!羽軸が戸板を貫通した。
「かくのらば、あまつかみは」
「あまのいはとをおしひらきて」
ざっ、雨戸が開く。考える間もなく転び出る。
ざわめく紫陽花。滞空する翡翠(かわせみ)が囀る。
「あまのやへぐもを、いづのちわきにちわきて。きこしめさむくにつかみは」
花神が、祝詞(のりと)を――
翼の飛び立つ刹那、知った声が耳に落ちた。
「汝(なれ)は吾(あ)がものぞ、イサナ」
ファンタジー
公開:19/03/09 13:00
紫陽花(あじさい):
移り気・冷酷・高慢(青・紫)
翡翠(ひすい・かわせみ)と
妖鳥セイレーン
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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