花神の庭~蜂巣賀(はちすか)

2
6

『下津磐根宮柱太敷立!!』

まただ。怠い身体を布団から剥がす。
ただの幻覚と知りながら気が重い。百合の花神(はなかみ)を殺し掛けた。祝詞(のりと)を私心で曲げた。花神と同じ名の旧知。それらが重なり、後味の悪さが拭えない。

気分転換に、何か食べるか。
通常の飲食が代謝に関与しない僕も、花神が昇った花や作物なら、身体に有効に作用する。黒百合に喰われた僕の、魂が戻った理由は不明だが、ここにいる限り、身体は万全に調え、役目を全うしなければ。

――プン、翅音が頬を叩く。
蜂?反射で避けるが、先回りで何か唇に掛けられた。
庭の蓮池の、花が散った実から、もう1匹這い出す。
ブン、プゥン。
並んだ二匹が八の字を飛ぶ。翅から雫が撥ねる。
雫を舐めた。甘い。蜂蜜?いや、この身体に沁み通って透明になる感じ。
甘露――神の雫だ。
目を閉じ、意識を開放する。
僕の身体は空気に融け、蓮の中に揺蕩(たゆた)った。
ファンタジー
公開:19/03/09 10:00
更新:19/03/09 16:30
蓮:清らかな心・神聖・休養

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO

ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容