花灯り

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通勤電車とスーツ、新しい人間関係に漸く馴染んできた僕はコンビニで夕食を買い、社宅へと向かう。
社宅の前には道路を隔てて霊園があり、今時期は桜が満開だ。
闇を仄白く幽美に照らす姿に自然と目が吸い寄せられる。

ふと、中学時代のクラスメイトを思い出した。

──桜子。
突然学校に来なくなった子。

『華がある』と云う言葉は能楽が発祥らしい。自然と惹かれる、花の如く不思議なオーラを纏った魅力……。
大人しいけれど顔立ちの整った桜子も『花』のある子だったと思う。
僕は気が付いたら何時もあの子を見つめていた。
──苗字、何だったかな。
僕は桜に見惚れ、いつのまにか霊園内を彷徨っていた。
呼ばれるように、一つの墓の前で足が止まる。

白石家之墓

──しらいしさくらこ。
──そうだ。白石だ。

墓誌に目が惹き寄せられる。

白石桜子
平成○○没 享年十五歳



──僕は桜子と奇妙な再会を遂げた。
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公開:19/03/09 23:23
更新:19/03/09 23:28

椿あやか( 猫町。 )

【椿あやか】(旧PN:AYAKA) 
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◆第18回坊っちゃん文学賞大賞受賞
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【note】400字以上の作品や日常報告など
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