東京チャージカード

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「お兄ちゃん助けて‥」
5月下旬、電話越しに悲痛な声が聞こえる。
待ち合わせたカフェで妹は堰を切ったように話し始めた。
「上京する前にお母さんから、これを渡されて」
そう言って取り出したのは東京チャージカードと書かれたカードだ。
「東京で困った時はこれを出せば大丈夫って。でも自動販売機もコンビニも反応しなくて」
俺は必死で笑いをこらえる。
「これは母さんの〝愛の〟チャージカードだな」
妹には意味がわからないようだ。
「俺も上京する時そのカード渡されたよ。でも、それはただのプラスチックのカード。困って母さんに電話したらやっと電話してくれた、って喜んでたよ。お前も電話したら?俺じゃなくて母さんに」
妹はわんわん泣き出した。記憶の中の泣き顔と全く変わらない。
お前なら大丈夫、そう言うと妹は涙を拭い、少しだけ笑った。
俺が電話したのは上京して一週間後だったという真実はコーヒーと一緒に飲み込んで。
その他
公開:19/03/09 21:45

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