さよなら、タイムズ・スクウェア

　この薄暗い、牢獄での生活。永遠に続くかと思われる廊下。もちろん、永遠ということはなく、一番奥にはボロボロの壁とそれに掛かる古ぼけた時計がある。壁の前は「タイムズ・スクウェア」と呼んでいる。どう？　洒落ているだろ？
　しかし、残念ながら、今日でこんな小洒落た生活ともおさらばだ。死刑の連絡がきたから。
　ああ、この塀の外での新生活を味わいたかったなあとしみじみ思う。来年にある王の代替わりの恩赦を期待していたのに、悔しいなあ。
　なのに、断頭台の上ったとき、死刑中止の連絡がきた。王宮内の権力闘争の結果、急きょ、代替わりが前倒しで行われることになったのだそうだ。いいぞ、権力闘争。いいぞ、新生活。ま、俺を殺したい奴はたくさんいるだろうけど、せいぜい生き延びてやるさ。
　翌日、王位を簒奪した主戦派の第二王子が隣国に宣戦布告をした。俺は最前線部隊に徴兵された。