母の調理器具
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母は私が幼い頃に死んだ。
高校卒業と同時に母の形見を持って飛び出した先の東京で優しい彼と出会った。
彼は私を愛し、私も彼を愛した。
彼の帰りが遅いことは気になったが、私のワンルームで始まった新生活は、幸せだった。
ある夜、私は結婚を切り出した。
その日を境に、彼は帰ってこなかった。
私は毎夜泣き、眠った。
食事を作る余裕も無かった。
ある日、帰宅すると机にはできたてのように温かい野菜炒めと、味噌汁と白いご飯が置いてあり、台所の様子はまるで先程まで誰かが夕飯の支度をしていたようだった。
恐る恐る料理を口に運ぶと、懐かしい母の味だった。
その日から、母の形見の調理器具が夕飯を作り、私は調理器具を洗って片付けるという奇妙な毎日が始まった。
深く傷ついた私の心は、徐々に癒えていった。
ある夜、帰宅すると机には夕飯ではなく、赤黒い液体に塗れた包丁が置いてあった。
私は包丁を洗って片付けた。
高校卒業と同時に母の形見を持って飛び出した先の東京で優しい彼と出会った。
彼は私を愛し、私も彼を愛した。
彼の帰りが遅いことは気になったが、私のワンルームで始まった新生活は、幸せだった。
ある夜、私は結婚を切り出した。
その日を境に、彼は帰ってこなかった。
私は毎夜泣き、眠った。
食事を作る余裕も無かった。
ある日、帰宅すると机にはできたてのように温かい野菜炒めと、味噌汁と白いご飯が置いてあり、台所の様子はまるで先程まで誰かが夕飯の支度をしていたようだった。
恐る恐る料理を口に運ぶと、懐かしい母の味だった。
その日から、母の形見の調理器具が夕飯を作り、私は調理器具を洗って片付けるという奇妙な毎日が始まった。
深く傷ついた私の心は、徐々に癒えていった。
ある夜、帰宅すると机には夕飯ではなく、赤黒い液体に塗れた包丁が置いてあった。
私は包丁を洗って片付けた。
ホラー
公開:19/03/07 22:52
新生活
登場することが趣味です。
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