花神の庭～藤娘（ふじむすめ）

松になりたや有馬の松に。藤に抱かれて寝とござる。
実際そう快くもない。がっちり縛られ、宙吊り状態だと特に。

初めはブランコだった。乗れとばかり揺れるから、童心で腰掛けたなり巻き付かれた。口が塞がり祝詞（のりと）も奏上出来ず、両手は後ろ手。文字通り手も足も出ない。
僕は断じて被虐趣味ではないが、百合が見たら、あらぬ誤解を受けそうな図だ。片肌脱ぎで藤に緊縛される男。裾は膝まで割れ、付属品に足袋。
「んんむうぅっ！」
念の為、猿轡は噛んでいない。口は別の物で塞がっている。
「……っぷは！げほごほっ！」
大盃を延々一気飲み。恐らく手入れの礼代わりだが、とんだ接待だ。
僕は酒に酔わず、飲食物は胃で消滅する。とは言え酒で溺死なんて冗談じゃない。ついでにどんな美人でも、花神（はなかみ）と寝るのも御免だ。

「いやぁぁぁ～～！！」
出し抜けに百合の悲鳴が飛び、僕は解放された。
交代に別の問題が浮上した。