後ろ向き新生活

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 僕は一人上京し、この春から通う大学近くの昭和臭いアパートに部屋を借りた。
 都会で初めての一人暮らしは不安だったけど、大家のおばあさんがとても優しく迎えてくれて、これから始まる新生活を明るく照らしてくれた。
 ただ大家さんはいつも首を寝違えていて、いつでも顔を左に向けていた。顔を見て話すには僕が大家さんの左に回り込むか、大家さんが体を捻る必要があった。
 それがずっと気になっていたせいか僕まで首を寝違えて、左を向いた頭が戻らなくなった。左の肩越しに大家さんを見て挨拶すると、大家さんも僕を左に見て挨拶を返す。なんだか古代エジプトの壁画みたいだと思ったら、急に世界が二次元の平面になって、僕は目の前の直線を進むか戻るかしかできなくなった。前から大型トラックが突っ込んできて──、目が覚めた。
「痛っ……」
 首を寝違えた。鏡に映った僕の頭は、百八十度真後ろを向いて僕の背中を見つめていた。
ホラー
公開:19/03/07 04:38
プチコン3 新生活

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