花神の庭～奇し撫子（あやしなでしこ）

「わぁぁぁ～」
「よものくになかと」
「ふぇぇぇ～！」
「おおやまと、ひだかみのくにを」
「ああああ～～！！」
「……やすくにと、さだめまつりて」
「ぎやああああ！！」

今年は何の厄年だ。
僕の腕で、火の付いた様に泣く赤ん坊。朝拾って数時間この調子。
ピンクの髪と肌。性別は女。花神（はなかみ）の幼生らしいが、種類は特定しかねる。
僕は花守り（はなもり）であって子守りじゃない。溜息を付いたら、

じょろろろろ～～。。。
こいつ、小便垂れやがった――！
種を結ぶ草の花神は、命が短い分、成長も早い。こう稚いとなると、不測の事態が想定されるが、如何せん僕は子育て未経験だ。
「ねーんねん、ころーりーよ、おこーろーりーよ」
子守唄は、ここまでしか知らない。
「ねーんねん、ころーりーよ」
ぱち。大きな目が開いた。
解ける様に笑い――すっと腕が軽くなる。
『……だぁ』
笑い声が、胸にちりと燻って消えた。