幻想動物見聞録・桃子の場合

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私の体には小鳥がいます。白くて艶々の毛並みです。小さい頃から胸にいて、ときどき鳥かごがほんのり透けるのです。そんな時は開け放してやります。ピ、と可愛く鳴いて、窓の外へと飛んでいき、空の色をすっかり宿して帰ってきます。体の弱い私のために、木々の空気や太陽の温かさを教えてくれる、数少ない友達でした。木漏れ日色、海色、川辺色、菜畑色に星空色。小鳥は私の心を半分移したり、外から色を運んだり、大変愛らしく動きます。
ある日部屋で本を読んでいると、開け放していた窓からボールが入ってきました。
「ボール取って」
利発そうな男の子でした。ボールを返すと、「ありがとう」とにっこり笑います。途端に小鳥が、鳥かごから飛び立ってしまいました。私はびっくりして惚けてしまい、座り込んでしまいました。しばらくして小鳥が戻ってきた時の桃色の見事なこと。改めて自覚して、恥ずかしい限りでした。
先生、これが若い頃の初恋です。
その他
公開:19/03/08 12:27
幻想動物見聞録 書類名『鳥かご少女の思い出話』

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
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『枇杷の独り言』
ショートショートコンテスト『家族』最優秀賞頂きました。

写真は全て自前でやっています(笑)

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