花神の庭~諱牡丹(いみなぼたん)

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「浮かれ獅子」
『ガウッ』
「越後獅子」
『グァウ!』
「翁獅子」
『グアウッ!』

はいはい失礼。巨大顎が牙を剥く度、『違う!』としか聞こえない時点で、かなり毒されている。
「かむはかりにはかりたまひて」
『ガオォ~ウ!!』
今のは違う。と解説する間に、僕が頭から喰われそうだ。

状況を端折って説明すると、牡丹の花神の唐獅子(からじし)は、名前を当ててほしいのだ。僕の代では初出だが、幸い過去の記録があった。
ただ――肝心の名前が書いてない。
牡丹の品種は腐る程ある。片端から連呼し、空振り続けて一昼夜。
「神楽獅子。麒麟獅子。紅貴獅子、崑崙獅子桜獅子新華獅子錦獅子白王獅子花貴獅子八千代獅子笑獅子」
『……』
黙った。次に間違えたら死ぬな。他に獅子の名前――

いや。むしろもっと単純に。
「花王?」
『ウォンッ』


ふぅ、やっと行った。
凄く耳が痛い。僕は迷わず、記録に『花王』と大書した。
ファンタジー
公開:19/03/08 01:00
牡丹(ぼたん。花神・花王): 富貴・風格・恥じらい 唐獅子牡丹と ルンペルシュティルツヒェン

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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