森をあやす

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実家が近づくにつれ、泣き声が大きくなってきた。母さんが電話で言ってたことは本当だったんだ。

休日のたびに父は、「森をあやしに行くわ」なんてウクレレを持って出掛けた。理由を尋ねると「だって泣いてるじゃねえか」と笑った。「曲が終わるとすやすや寝ちまうんだ」とも。

そんな話は信じてなかった。でも父が死んでしばらく経ったころ、母さんにも森の泣き声が聞こえ始めたらしい。

「頭でもおかしくなったかと思って、仏壇に手を合わせたら思いついたんよ。お骨を森に移して、父さんにあやしてもらおうってさ」

せめてその手伝いをすることが、一人息子の責務である気がして、僕は急いで帰省してきたのだ。けれども一歩遅かったみたいで…。

「お墓移したら、森の代わりに今度は父さんが泣き出してなあ。今からあやしに行くけど、お前も行くか?」

バッチリ化粧した母さんはパウスカートをひらり翻し、泣きじゃくる森に入っていった。
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公開:19/03/05 23:49

糸太

400字って面白いですね。もっと上手く詰め込めるよう、日々精進しております。

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