花神の庭~虞美人喪(ぐびじんそう)

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狭霧に包まれた、白裳(はくも)の葬列が見渡す限り続く。
僕は葬列を見ている。いつから?――判らない。何の為に?――判らない。
何もかも億劫な程眠くて、五感がそっくり遠い。
もしやこれが夢?
――判らない。
僕は夢を見ない。見られないはずだ。眠る事がそもそも出来ない。
覚醒しない時の僕は、この世界に存在しない。

『……ナ』
呼んでいる?
でも、返事出来ない。どうでもいい。ここは白くて、白くて蕩けそうに気持ち良い。
『……サ・ナ』
呼ぶな。僕はここにいる。その方が幸せなんだ。
『イサナ』

宙に伸ばした手を握る。
雨戸の隙間から、青白い光が漏れている。
送り手を二回。光が列をなして昇り、新月の闇が降りた。

危うく魂ごと持って行かれるところだった。淋しい奴は道連れを欲するから。
それは僕の方か。額の髪を除けると、白い花襞(ひだ)が一枚零れた。

『イサナ』
まだ早い。僕にはまだやる事がある。
ファンタジー
公開:19/03/06 00:00
更新:19/03/05 23:44
ケシ(罌粟・虞美人草): 忘却・眠り・別れの悲しみ(白) ※アヘンの材料になる罌粟と 園芸の罌粟(ポピー)は別種です

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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