ことのは課

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春。私は役場に就職し「ことのは課」に配属された。
これまでラクロス一筋、体育会系の私にそんな文芸部署が務まるのだろうか。初日、とにかく声だけは出そうと課の扉を開けて・・・一か月が過ぎた。
「三浦さんそっち行った!」
「はい!」
私はラケットを一振りしてそれを捕まえた。ラクロスの球に比べれば余裕!
「さすがっ」と、主査の池谷さんがラケットの網の中で暴れているそれを掃除機のようなもので吸い込んだ。
捕まえたのは「言の葉」。言葉は受け取る人がいないと言の葉となって町を彷徨う。中でもネガティブな言の葉は尖っていて誰彼かまわず傷つけるのでその回収がことのは課の仕事だ。
あ!
甘い綿菓子のような言の葉が池谷さんに触れようとしたので咄嗟に叩き落とした。
鉄壁の元ゴーリーをなめんじゃないわよ!
にしても池谷さんは全く気づいてない。鈍感すぎる。これじゃ私の気持ちに気づいてもらえるのも当分先になりそうだ。
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公開:19/03/05 21:47
更新:19/03/09 15:44

杉野圭志

元・松山帖句です。

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