春から春へ

春になると毎年僕ら家族は、車に乗って移動する。荷物は車に乗る分だけ。
父さん、母さん、僕、弟がリュック一個分の荷物を持つ。
「次は海がいいか、山がいいか」
父さんがハンドルを握りながら楽しそうに言う。
「おいしい魚が食べたいわねぇ」
「肉がいいよ、肉！肉！」
僕と弟は肉コールをする。

父さんはパソコンとスマホがあればどこでも仕事が出来るって言う。だから家を持たない。父さんのユニークな方針で、一年ごとに住む場所を変えて、新しい場所で新しい生活を送る。夢は全国制覇だ。
「母さんに美味しい魚を食べさせたいから、次は海にしよう！」
「えー」
僕と弟はブーブー文句を言ったけど、本当は全然嫌じゃない。どこに行っても新しい場所にはいつもワクワクすることがいっぱいあるから。
今度は、どんな友達が出来るかなぁ。

荷物はね、ほんのちょっとでいいんだよ。だって僕らは日本中に、大切な仲間がたくさんいるから。