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今回も順調で良かった。
雨水に浸からず、天敵にも見つかることのなかったその卵たちは、満月が水平線から上がる頃次々と孵化を始めた。
出てきたばかりの海亀の子供たちは「それ」をしっかりと口の中にしまい、パタパタと覚束無い足取りで、でも一時の迷いもなく海へと向かう。

月明の下さざめく波打ち際に辿り着くと、再び満月の方向を見定め泳ぎ始める。
ゴールは月のクレーター。
ちょうど水平線と月光が交わるその位置から光に導かれ月まで昇る。

月では担当が今か今かと待ち受けており、たどり着いた海亀から丁寧に「思いの泡」を取り出す。
海亀の子たちは、海で亡くなった人間の最期の一言を母から受け取り、ここへ運んでいるのだ。それを満月の光に乗せ相手に届くよう、やわらかく地上へ放つ。

無事任務を終えた子供たちは、次の満月の夜にそこから海へ還る。
あらたなる冒険に少しの緊張を携え、ゆらりゆらと波間へ溶けていく──。
ファンタジー
公開:19/03/07 09:00
更新:19/03/20 02:14

ことのは もも( 日本 )

日本語が好き♡
18歳の頃から時々文章を書いています。
最近書いたものと昔書いたものをランダムにアップしています。
どれかひとつでも誰かの心に届きます様に☆
感想はいつでもお待ちしています!
宜しくお願い致します☆

2018年5月から書き始めて、2019年3月の時点で200作になりました。
これからもゆっくりですが、コツコツ書いていこうと思います(*^^*)
 

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