包まれて

0
5

最初に言いだしたのは、彼女の方だった。
のん気な僕をグイグイ引っ張っていくことに喜びを見い出し始めてくれたらしい。

9月に知り合って以来、
洋服の系統や好きな本のジャンルまで彼女好みに変えられてしまった。

ねぇ、一緒に暮らしてみない?

僕は何となく決まりが悪くなって目の前のコーヒーを一気に飲み干した。
本来は男である僕が言うべきはずの台詞である。口の中に広がるコーヒーの苦味が、今の気持ちを代弁しているように感じた。つくづく自分の性格に嫌気が指す。

ベランダで、僕は彼女と彼女の荷物を乗せたトラックを待っている。 春の匂いをふんだんに纏った風が心地よく吹いている。

おーーーいっ!

声が聞こえ、下を覗くとトラックから降りた彼女が手を振っていた。
荷物をおろしたらすぐに桜を見に行こう。ちょうど近くに有名な桜通りがある。
ぎゅっと手を繋いで出来るだけゆっくり歩こうと決めていた。
恋愛
公開:19/03/07 03:32
更新:19/03/08 21:11

そら豆( 港区 )

間違えてアカウント2つになってしまい、
もう1つの方は消しました。こっちのアカウントがメインです。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容